DataverseのBusiness skillsとは?ナレッジとの違いと、企業で活用するメリット

2026.09.08
DataverseのBusiness skillsとは?ナレッジとの違いと、企業で活用するメリット

はじめに

MS開発部の松坂です。

Microsoft DataverseのBusiness skills(プレビュー)は、業務プロセスや社内ルールを自然言語の手順として一元管理し、複数のAIエージェントから再利用できる機能です。

本記事では、ファイルナレッジとの違いを整理しながら、企業でBusiness skillsを利用するメリットと導入手順を紹介します。

Business skillsとは

Business skillsは、担当者が業務を進める際の判断基準や手順を、Markdown形式の自然言語で定義し、複数のAIエージェントから共通して利用できる仕組みです。

例えば、顧客からの返品依頼に対応するAIエージェントを考えてみましょう。返品対応では、注文情報を検索するだけでなく、次のような業務上の判断が必要です。

  • 購入から30日以内であることを確認する
  • 返品対象外の商品ではないか確認する
  • 返金額が10万円を超える場合は上長の承認を求める
  • 担当者に閲覧権限のない顧客情報は表示しない

Business skillsには、このうち「返品期限を確認する」「対象商品を確認する」「高額な返金では承認を求める」といった、エージェントが従うべき業務手順や判断ルールを定義できます。

登録されたスキルは、Dataverse MCP Serverを通じて、エージェントによって実行時に検索・参照されます。そのため、同じ返品対応ルールを営業部門やカスタマーサポート部門など、複数のエージェントで共通して利用できます。

また、返品期限を30日から14日に変更した場合も、Business skillsを更新すれば、各エージェントのファイルナレッジを個別に修正する必要はありません。

ただし、Business skills自体はプログラムやワークフローではありません。データの検索や更新などを実行するには、Dataverse MCP ServerのツールやPower Platformコネクタを別途エージェントへ追加する必要があります。

最大のメリットは「精度」ではなく「ガバナンス」

Business skillsとファイルナレッジのどちらが高精度かについて、Microsoftは直接比較したベンチマークを公開していません。

そもそも両者は、主な用途が異なります。

項目 Business skills ファイルナレッジ
主な用途 業務手順や判断ルールの共有 文書内容の検索と回答生成
参照方法 MCP経由で必要なスキルを発見 文書をチャンク化して検索
管理単位 Dataverse環境 エージェントやデータソース
複数エージェントでの利用 一つのスキルを再利用可能 登録方法によって異なる
得意なこと 手順の標準化、統制、変更管理 大量文書の検索、要約、引用

Business skillsの価値は、「回答が劇的に正確になること」よりも、エージェントが従う業務ルールを組織として管理できることにあります。

Dataverseのセキュリティを利用できる

Business skillsを利用する大きな理由の一つが、Dataverseのセキュリティモデルと組み合わせられることです。

Dataverseでは、次のような制御ができます。

  • セキュリティロールによるテーブルへのアクセス制御
  • 行レベルでのレコードアクセス制御
  • 列レベルセキュリティによる機密項目の保護
  • スキルの所有者、閲覧者、共同所有者の設定
  • ユーザーまたはチーム単位でのスキル共有
  • MCPクライアントの環境単位での許可

Dataverse MCP Serverも、利用者に割り当てられたセキュリティロールと行レベルセキュリティを尊重します。そのため、エージェントがDataverseへ接続したからといって、すべてのデータを無条件に取得できるわけではありません。

ただし、「Business skillsを使えば情報漏えいを完全に防げる」という意味ではありません。エージェントの認証、接続資格情報、DLPポリシー、公開チャネルなども含めた設計が必要です。

個人任せのナレッジ管理を防ぎやすい

ファイルを個々のエージェントへ直接アップロードする運用では、次のような問題が起こりがちです。

  • 同じファイルが複数のエージェントに登録される
  • どのファイルが最新版なのか分からない
  • 更新時にすべてのエージェントで再登録が必要になる
  • 担当者ごとに異なるルールが登録される
  • 担当者の異動後に管理者が分からなくなる

Business skillsでは、業務手順をDataverse上の一か所で管理し、複数のエージェントから参照できます。内容を更新すれば、そのスキルを利用するエージェントへ共通して反映できます。

また、Business skillをPower Platformのソリューションへ追加すれば、開発、テスト、本番環境への移送対象として管理できます。これにより、個人管理ではなく、組織の変更管理プロセスへ組み込みやすくなります。

なお、Business skillも既定では個人所有の「Individual」として作成されます。登録するだけで自動的にガバナンスが確立されるわけではありません。チーム共有、所有者、公開範囲、更新責任者などの運用ルールをあわせて定めることが重要です。

ファイルナレッジが危険というわけではない

Business skillsのメリットを説明する際、「ファイルナレッジにはセキュリティがない」と表現するのは正確ではありません。

Copilot StudioへアップロードしたファイルはDataverseに保存されます。また、SharePointやOneDriveをナレッジソースとして利用する場合は、元データのアクセス権が実行時に確認されます。

そのため、次のように使い分けるのが現実的です。

  • Business skills:業務手順、判断基準、データの取り扱いルール
  • SharePointなどのナレッジ:規程、マニュアル、製品資料などの大量文書
  • Dataverse:顧客、案件、契約などの構造化された業務データ

どちらか一方へ統一するのではなく、用途に応じて組み合わせることが重要です。

Business skillsを利用するまでの手順

1. Dataverse intelligenceを有効化する

Power Platform管理センターで、対象環境を開きます。

  1. ManageからEnvironmentsを選択
  2. 対象環境のSettingsを開く
  3. Product > Featuresを選択
  4. Turn on Dataverse intelligence (Work IQ) for agents and AI experiencesをオンにする
  5. Allow MCP clients to interact with Dataverse MCP serverがオンであることを確認する

Business skillsの設定は既定でオフです。また、地域ごとの展開状況によっては設定が表示されない場合があります。

2. Business skillsを作成する

Power Appsで対象のDataverse環境を選択します。

  1. More > Business skills (preview)を開く
  2. New business skillを選択
  3. スキル名と説明を入力
  4. Markdown形式で業務手順を記述
  5. 保存して必要なリソースを追加

説明欄には、スキルの内容だけでなく、どのような状況で使用するスキルなのかを明確に記述します。エージェントが適切なスキルを発見しやすくなるためです。

3. Dataverse MCP Serverを追加する

Power AppsでDataverseの接続を追加します

  1. More > Connectionを開く
  2. Microsoft Dataverseを選択
  3. 任意の表示名と認証の種類を設定して作成

4. エージェントにDataverse MCP Serverを追加する

作成した接続を使用して、Copilot StudioなどのエージェントにDataverse MCP Serverをツールとして追加します。これにより、エージェントがBusiness skillsを実行時に検索・参照できるようになります。

Copilot Studioでは、対象のエージェントを開き、Tools > Add toolからModel Context Protocolを選択して、Dataverse MCP Serverを追加します。

エージェントがBusiness skillsを優先的に確認するよう、Instructionsへ次のような指示を追加することもできます。

まとめ

Business skillsは、ファイルナレッジを単純に置き換えるものではありません。業務手順やデータの取り扱いルールをDataverse上で一元管理し、アクセス制御を維持しながら複数のエージェントで再利用できる点に価値があります。

AIエージェントを個人の実験から企業全体の仕組みへ発展させるには、回答精度だけでなく、「誰が管理するのか」「誰が利用できるのか」「変更をどう反映するのか」というガバナンスが欠かせません。Business skillsは、そのための有力な選択肢といえるでしょう。

参考資料

以上、最後までご愛読いただき
ありがとうございました。

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