【Microsoft Azure】 Azure Cosmos DB の使いどころと相性の良いデザインパターンについて解説 Part1

2025.05.01
【Microsoft Azure】 Azure Cosmos DB の使いどころと相性の良いデザインパターンについて解説 Part1

こんにちは、MS開発部の渋谷です。

みなさん、Azure Cosmos DBと聞いて何を思い浮かべますか?NoSQLや分散といったキーワードが出てきてもなかなかイメージがつきにくい方もいらっしゃるかと存じます。

そこで本記事ではAzure Cosmos DB(特にNoSQLを扱います)の概要と主な使いどころ(ユースケース)について説明し、さらに CQRSパターンイベントソーシングマテリアライズドビュー といったデザインパターンがCosmos DB上でどのように活用できるかを解説します。

また、Cosmos DBと他のAzureサービスとの連携方法についても初心者向けに紹介します。

今回は、Azure Cosmos DBの概要とそのユースケースについて解説し、Part2ではデザインパターンについて解説します。

Azure Cosmos DBの概要と特徴

Azure Cosmos DB は、Microsoft Azureが提供するフルマネージド型のグローバル分散 NoSQLデータベース サービスです。従来のリレーショナルデータベースとは異なり、スキーマレスな柔軟性水平スケーラビリティを備え、多種多様なアプリケーションのニーズに応えられるよう設計されています。
主な特徴を以下にまとめます。

  •  グローバル分散と高可用性: データを複数の地域にレプリケーションでき、地理的に分散したユーザーにもミリ秒単位の低レイテンシで応答します。Azure Cosmos DBは 99.999% の可用性SLAを提供し、単一リージョンでも 99.99% の可用性を保証します。
  • 高度なスケーラビリティ: データは自動的にパーティション分割され、スループット(リクエストユニットRU/s)とストレージをアプリケーション需要に応じて弾力的にスケーリングできます。大規模な読み書き負荷にも対応可能です。
  • マルチモデル対応: ドキュメント(JSON)、キー・バリュー、グラフ、カラムファミリーなど複数のデータモデルをサポートし、NoSQL、MongoDB、Cassandra、Gremlin(グラフ)、Tableなど複数のAPIでデータ操作が可能です。このマルチモデル・マルチAPI対応により、用途に応じた柔軟なデータ表現ができます。なお、新規でNoSQLのワークロードを利用する場合は基本的にNoSQL APIを利用することが多いです。
  • スキーマレス設計: データスキーマの事前定義が不要で、アイテム(ドキュメント)ごとに異なる構造のデータもそのまま保存できます。アプリケーション要件の変化に合わせてフィールドの追加や変更が容易に行え、開発速度を損なわずにデータモデルを進化させられます。
  • 高速な処理性能: SSDに支えられたストレージにより、読み取り・書き込みともにシングルミリ秒台のレイテンシを実現しています。また自動インデックス作成により、明示的なインデックス管理なしで高速なクエリ応答が可能です。

以上の特長から、Cosmos DB は グローバル展開する大規模アプリケーションや、リアルタイム性が要求されるシステム(例: IoTデバイスからのデータ収集)に適したデータベースと言えます。

一方で、厳密なトランザクション管理が必要なケースには不向きであり、データの整合性チェックをアプリケーション側でも工夫する必要があるなど、RDBMSと同じように利用すると不都合が出てくるため、ユースケースやDBへ求める要件、データの特性に応じて最適なデータストアを選択する必要があります。

今回はCosmos DB for NoSQLを解説しますが、AzureにはほかにもSQL DBやMySQL、PostgreSQL、分散型DB(NewSQL)のPostgreSQLである Cosmos DB for PostgreSQL などといった様々なサービスが提供されています。

 

Azure Cosmos DBの主な使いどころ(ユースケース)

Azure Cosmos DB はその特性を活かし、さまざまな用途で利用されています。代表的なユースケースとして、以下のようなシナリオが挙げられます。

  • ユーザー生成コンテンツ (UGC) の保存: チャットメッセージ、投稿、コメント、レビューなどのユーザー生成コンテンツをスケーラブルに保存・クエリするケースです。ソーシャルメディアやブログなどではデータ構造が頻繁に変化し得る自由形式のテキストやタグ情報を扱いますが、Cosmos DB のスキーマレス性により複雑なマッピングなしに格納できます。また自動インデックス化により、投稿内容やタグに対する検索も即座に実行できます。
  • イベントログの記録: アプリケーションの操作履歴やシステムのイベントログを蓄積するケースです。例えばWebサイトのユーザー操作ログやセンサーから送られるイベントデータを、Cosmos DBに継続的に書き込んでいくことで、リアルタイム監視や履歴分析が可能になります。Cosmos DBは高スループット書き込みに対応しているため、大量のイベントをタイムアウトなく受け付け、必要に応じて直近のイベントを素早く分析できます。
  • カタログデータのストア: 商品カタログやユーザーアカウント情報など、多様な属性を持つエンティティのデータストアに利用できます。例えばECサイトの商品データでは、各商品に名称・価格・カテゴリ・在庫状況など多数の属性があり、時間経過とともに属性項目が追加・変更されることもあります。Cosmos DBならスキーマ変更を気にせずこれら商品ドキュメントを保存できます。またユーザーアカウントやIoTデバイスのレジストリ、部品表(BOM) などもカタログデータの例であり、いずれも各アイテムの属性が可変である点でCosmos DBが適しています。
  • ユーザー設定データの保存(パーソナライズ): 近年のアプリケーションはユーザーごとにカスタマイズされたエクスペリエンスを提供するため、ユーザー固有の設定や嗜好データを高速に取得する必要があります。Cosmos DB は JSON形式のデータ格納を得意とし、例えばユーザープロファイルやアプリの設定データを保存しておけばミリ秒レベルで読み出せます。取得したJSONをそのままクライアント側(JavaScriptなど)で扱えるため、UIのレイアウトやコンテンツを即座にユーザー向けにパーソナライズすることができます。
  • IoTデータのリアルタイム処理: IoTセンサーやデバイスから送信される膨大な時系列データの格納にも適しています。各種デバイスから発生するテレメトリーデータを世界中のリージョンで受け取り、Cosmos DB に集約することで、地理的に分散したIoTデータストアを構築できます。Cosmos DBの自動スケーリング機能を使えばデバイス数の急増にも対応でき、また各デバイスIDをパーティションキーとすることで書き込みのスケールアウトと効率的なクエリが可能です。リアルタイム分析や異常検知のために直近データを即時に取り出す用途でも、低遅延なCosmos DBは有効です。

以上のように、Azure Cosmos DB は ソーシャルアプリケーションからIoTシステムまで幅広い分野で活用されています。特に「ミリ秒単位の高速応答」「スキーマの柔軟性」「グローバルスケール」が要求されるユースケースで、その真価を発揮します。

また最近のアップデートで、ベクトルDBとしての役割も非常に強くなってきており、様々な機能が追加されてきました。特に、Azure Cosmos DBのベクター検索機能は強力で、DiskANN(Disk-based Approximate Nearest Neighbor)というグラフベースのインデックス作成および検索システムに基づいています。
DiskANNは、大量のベクター データを効率的にインデックス化、格納、検索するためのシステムで、メモリ内に高度に圧縮されたベクターを保持しつつ、完全なベクターとグラフ構造を高速SSDに保存します。これにより、高速かつコスト効率の高い検索を実現し、クエリ フィルター処理の効率化もサポートしています。

 

まとめ

今回はCosmos DBの概要と使いどころ(ユースケース)について解説しました。

Cosmos DBは従来のRDBと比較してスキーマレスであることや、大規模な書き込みといった場面に強いという特徴があり、柔軟な運用・高速なレスポンス・グローバル分散といったキーワードが出てくるようなユースケースで活用できます。

Part2ではCosmos DBと相性の良いデザインパターンについて解説します。

   

以上、最後までご愛読いただき
ありがとうございました。

お問い合わせは、
以下のフォームへご連絡ください。

お問い合わせ

PAGETOP