【Microsoft Azure】 Azureで利用可能な主なコンテナサービスの比較と使いどころを解説!

2025.04.08
【Microsoft Azure】 Azureで利用可能な主なコンテナサービスの比較と使いどころを解説!

こんにちは、MS開発部の渋谷です。

Azureでは、コンテナーを使ってアプリケーションを実行するためのサービスがいくつか用意されています。 どのサービスを選ぶかは、ご自身のアプリケーションの種類や運用方法、チームのスキルなどによって変わります。

この記事では、どのAzureコンテナーサービスがご自身のニーズにあっているかを判断するためのポイントを解説していきます。

基本の考え方

サービスを選ぶ際には、下記のようなポイントがあります。

  • どれだけ自分で細かい設定や管理をしたいか(=制御の自由度)
  • どれだけ簡単に使いたいか(=運用の手間を減らしたいか)

つまり、細かい設定ができる分、自分で管理する手間が増えるのか、あるいはAzureに多く任せてシンプルに使いたいのか、というトレードオフです。

Azureの主なコンテナーサービス

  • Azure Container Apps
    • 基盤となるKubernetesの仕組みを、ユーザーが直接管理する必要なく利用できるサービスです。
    • サーバーレスにも対応しており、必要なコンピューターリソースを柔軟に使えます。
    • アプリケーションのスケール(拡大・縮小)や、トラフィックの分割、A/Bテストなどが簡単に実施可能です。
  • AKS(Azure Kubernetes Service)
    • Kubernetesを使ったサービスで、より細かい制御やカスタマイズが可能です。
    • 自分で設定する部分が多く、運用管理やセキュリティ対策などもしっかり行う必要があります。
    • 初心者だと学習コストは高いですが、経験を積むと柔軟性の高い使い方ができます。 ※ちなみに、最近では「AKS Automatic」という、いくつかの管理作業を自動化してくれる簡易版もあります。
  • Web App for Containers(App Serviceの機能)
    • HTTPベースのWebアプリを簡単にホストできるように設計されたサービスです。
    • インフラ管理(サーバーのパッチ適用やスケーリングなど)はAzure側が担ってくれるので、使いやすさが特徴です。
    • シンプルで直感的な操作ができるため、既に他のAzureのPaaSサービスを使っている方には取り入れやすいでしょう。

どのサービスを選ぶべきか?

上記の中でも特に、コンテナオーケストレーションが必要ない単一コンテナのワークロードや単純なサイドカーパターンのワークロードの場合は、Web App for Containersをまず検討するのが良いでしょう。
一方で、コンテナオーケストレーションが必要なマルチコンテナワークロードの場合は、まずContainer Appsを検討し、要件を満たさない場合はAKSを検討するという順番で考えるとよいでしょう。

また、以下の観点も重要になってきます。

  • 自分たちで細かい設定を行いたいか、それとも簡単に運用したいか
    • 細かく制御したい場合 → AKS
    • できるだけ管理作業を減らして開発に集中したい場合 → Container AppsやWeb App for Containers
  • どれだけ柔軟にネットワークやセキュリティを設定する必要があるか
    • AKSなら、Kubernetesの名前空間やアクセス制御で細かく分けることが可能です。
    • Container AppsやWeb Appは、管理がシンプルになる代わりに、カスタマイズの自由度が一部制限されています。
  • 複数のアプリやサービスを同じ環境で動かすか、ひとまとめで運用するか
    • たとえば、AKSならひとつのクラスター内で複数のワークロードを動かすことができますが、その場合、セキュリティやネットワークの隔離を自分たちでしっかり考える必要があります。
    • 一方、Container Appsは、1つの環境内のアプリ同士は比較的自由に通信できるため、単一のワークロードや密接に関連するコンポーネント向きです。

運用面・セキュリティ面のポイント

運用管理について、AKS は柔軟な反面、ノードの更新やパッチ適用、アップグレードなどを自分たちで行う必要があり、専門知識が求められます。一方、Container Apps や Web App for Containers は、Azure 側が OS の管理やスケーリングなど多くの作業を自動で実施してくれるため、初心者でも取り扱いやすいです。

また、セキュリティ対策については、すべてのサービスは、Azure のセキュリティ機能(Key Vault、マネージド ID など)と連携しており、大切なデータや秘密情報を安全に守ります。その中で、AKS は細かいアクセス制御やネットワークポリシーの設定が可能ですが、その分設定が複雑になる場合があります。対して、Container Apps や Web App は、あらかじめ用意されたセキュリティ対策を利用する形になるため、初心者でも安心して使えます。

アーキテクチャ設計から考えるサービス選定

Azure でコンテナーを使ったアプリケーションを運用する場合、どのサービスを使うかだけでなく、アーキテクチャ(全体の設計)の決定がとても重要です。ここでは、ネットワーク、セキュリティ、運用、信頼性の4つの大きな切り口で、どんな点を考えるべきかを解説します。

ネットワークの考え方

  • 目的:アプリ同士や外部とどのように通信するかを決める。
  • ポイント:IP アドレスの割り当て、サブネットの大きさ、ロードバランサーの設計などが重要です。
  • サービスごとの差:
    •  Container Apps は、Azure 側が基本的なネットワーク設定を自動で管理しますが、環境ごとに1つの入口 IP に制限されます。
    •  AKS は、Kubernetes のネットワークポリシーによって細かい設定が可能ですが、その分デザイン・管理の負担が大きくなります。
    •  Web App for Containers は、既存のApp Serviceの仕組みを利用しているため、なじみやすい設計となります。

セキュリティの考え方

  • 目的:不正なアクセスやデータ漏洩から守ること。
  • ポイント:ネットワークのセキュリティ(例:特定の IP のみ許可)と、アプリケーションレベルのセキュリティ(例:認証・シークレット管理)の両面を考える。
  • 利用例:Key Vault やマネージド ID を使って、パスワードや証明書などのシークレット情報を安全に管理します。
  • サービスごとの差
    • AKS は細かい設定ができるため、設定次第ではセキュリティの強度も変わります。
    • Container Apps や Web App は、あらかじめ用意されたセキュリティ対策により、初心者でも扱いやすい一方、カスタマイズの自由度は低くなります。

運用上の考え方

  • 目的:日々の管理作業(更新、パッチ適用、コンテナーの更新、スケーリングなど)をスムーズに行うこと。
  • ポイント:どこまで自動化できるか、また自分たちで管理作業を行う必要があるかを把握します。
  • サービスごとの差:
    •  AKS は、ノードの更新やアップグレード作業を自分たちで行う必要があるため、運用の負担が大きいです。
    •  Container Apps や Web App for Containers は、基盤となる OS やパッチの管理を Azure が担当するので、運用負担が軽減されます。 スケーリングの仕組みもサービスにより異なり、イベントに応じた自動スケールが可能なものもあります。

信頼性・可用性の考え方

  • 目的:システムが常に正常に動作し、障害が発生したときに速やかに復旧できるようにする。
  • ポイント:SLA(稼働率保証)、冗長構成(可用性ゾーン)、ヘルスチェック(コンテナーの状態監視)などを活用し、ダウンタイムを極力抑えます。
  • サービスごとの差:
    • AKSでは詳細なヘルスチェックや自動復旧の設定が可能ですが、Container AppsやWeb App for Containersはあらかじめ決められたヘルスチェックの仕組みが利用されます。

まとめ

Azureのコンテナーサービスを選ぶときは、以下のポイントを整理することが必要です。

  1. どれだけ細かい制御やカスタマイズが必要か
  2. 運用管理(更新、パッチ適用、スケーリングなど)の負担をどこまで許容できるか
  3. ネットワークやセキュリティ、信頼性の要求レベルはどうか

具体的には、

  • 高度なカスタマイズや自由な設定が必要な場合は AKS(または AKS Automatic)を選ぶ。
  • 運用の手間をなるべく減らし、すぐにクラウドネイティブな機能を利用したい場合は Container Apps や Web App for Containers が適している。

また、ほとんどのコンテナーは Linux ベースですが、Windowsコンテナーを利用したい場合は、AKSやWeb App for Containersが対応しているため、システム全体の構成を確認することも重要です。

さらに、ネットワークの設計では、十分なIPアドレスの計画やサブネットの設定、ロードバランサーの役割、そしてセキュリティでは、Key VaultやマネージドIDの利用、ネットワークアクセスのルールなどを最初にしっかり決める必要があります。運用面・信頼性についても、コンテナーの更新、パッチ適用、ヘルスチェック、ローリングアップデートなど、障害発生時に迅速に復旧できる仕組みを採用することが求められます。

 

そのうえで、Azureのコンテナーサービスは、それぞれ次のような特徴があります。

  • AKS:自由度が高く、細かいネットワーク設定やセキュリティ対策が可能ですが、その分運用管理は自分たちで行う必要があり、初心者にはハードルが高い面もあります。
  • Container Apps:Azureが多くのインフラ管理を自動で行ってくれるため、運用の負担が軽減され、クラウドネイティブな機能を手軽に利用できます。初心者におすすめです。
  • Web App for Containers:App Serviceの仕組みを利用しており、HTTPベースのウェブアプリの運用が簡単です。既にApp Serviceに慣れている方にはなじみやすいでしょう。

最終的には、これまで解説した内容を自社の業務要件やチームのスキルに合わせて整理し、実際にサービスを試しつつ、最適なバランス(細かい制御と運用の簡単さ)を見つけることが、成功するシステム設計へとつながります。また、今回はAzureで利用可能な代表的なコンテナーサービスを紹介しましたが、ほかにもAzure Red Hat OpenShiftやAzure Container Instancesといったサービスもありますので、併せてご確認ください。

 

参考:Azure コンテナー サービスの選択に関する一般的な考慮事項 – Azure Architecture Center | Microsoft Learn

 

以上、最後までご愛読いただき
ありがとうございました。

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